令和6年度東京都現場対話型スタートアップ協働プロジェクト
水道局総務部 × 株式会社エムニ 協働ストーリー
〜 協働テーマ 〜
気候情報等のビッグデータと水道料金の増減を分析できるツールを導入し、
状況変化に応じた収入の見通しを立てたい!
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水道局総務部
水道局は都民生活と都市活動を支える基幹的な都市基盤施設の一つとして、23特別区と多摩地区統合26市町に給水を行うほか、多摩地区未統合市に対して暫定分水を行っています。総務部では、水道事業を将来にわたって安定的に運営し続けるため、長期的な視点で目標管理、施策のブラッシュアップを図っています。
株式会社エムニ株式会社エムニは、AI開発で有名な東京大学松尾研究所発のスタートアップです。製造業を中心に、生成AI等を活用したシステムの構築を得意としており、多数のハッカソンでの優勝・入賞経験があります。
協働プロジェクト紹介
課題背景
東京都水道局では水道事業の安定した運営のため、3~5年度ごとに「東京水道経営プラン」を策定しています。現行プランでは過去の実績から料金収入見込を算出したものの、コロナの長期化とその回復が予想と比べ遅れたことなどから乖離が生じていました。令和6年現在、令和8年度からの次期プランの策定に向けた検討を進めていますが、複雑化する水道料金収入の推計要因を考慮し、かつ職員が簡単に収入見込みを算出できる予測システムの構築が求められていました。
ソリューション
AIの機械学習を⽤いて多様な因子分析が可能な、水道料金収入の分析‧予測ツールの開発および導入
プロジェクト実施期間
2024年9月~2025年2月
協働の様子プロジェクトの進行
プロジェクト開始時、水道局としてやりたいことや使用可能なデータは明確であるものの、どの程度の予測精度の向上が見込めるか不明な状態だったため、初期分析の精度を確認することから始めました。初期分析の時点で一定の精度に達したため、さらなる精度の向上を目指し、実務で求められる予測精度のヒアリングと対話を重ねながら、適宜データを追加し多様な分析手法を試していきました。
最終的に水道局の現行の予測方法と比較し、55-78%まで誤差を削減しました。
このように予測精度向上のサイクルを早期に確立できたため、さらに、水道局の職員が誰でも予測モデルを扱えるツールの作成まで今年度中に行うこととしました。今後広く職員が利用することを見据え、開発と並行して操作感や分析・予測結果の可視化方法等、水道局から随時フィードバックをもらい、細かな改善を重ねました。最終的に、直感的に操作ができ、少ないアクションで分かりやすいグラフ形式で分析・予測結果が表示されるツールが完成しました。
また、現場への実導入を見据え、ツール自体の改善にとどまらず、初心者が迷わずに使用できる方法をエムニでも検討し、操作方法の動画付きマニュアルも提供されました。
プロジェクトの成果成果
AIを活用した当該モデルにより、水道料金の実績データのみを使用した結果と比較し、より高精度な分析・予測が可能となりました。水道局にとっては、この複雑なモデルを容易に扱えるツールによって、水道料金収入計画の精度向上および現場への導入可能性を検証できましたが、それだけでなく、エムニにとっても意義深い取組となりました。
従来は基盤モデルと呼ばれるAIに多量のデータをインプットし、タスク実行時にデータセットから再学習する方法が主流で、少ないデータでの時系列予測は困難でした。しかし今回、LLM(大規模言語モデル)の活用により、直近のデータや欠損したデータに対応した時系列予測が可能となり、水道局の課題解決およびエムニの新たなアセットの構築を実現しました。
今後の展望
今回の協働では、都政現場とスタートアップが「対話」をしながらトライ&エラーを重ねることにより、分析・予測精度を向上させるサイクルを早期に構築できたことで、実際の運用場面を想定したツールの開発にまで取り組むことが出来ました。協働プロジェクト終了後、水道局からは「初期分析結果で一定程度満足していたが、これを以て終了するのではなく、エムニから追加で新たな分析・予測手法への挑戦について提案頂いたことや、水道局職員の使用場面を想定してツールの仕様を検討して頂けたこと等、迅速かつ細やかに、積極的な対応をして頂けたことで、短期間で想像以上の成果を創出できた」との声がありました。エムニは「様々な分析手法を試すと上手くいかないものも必ずあるが、『失敗に対する説明』を求められるのではなく、対話をしながら次々に新しい手法に挑戦できたため、短期間で成果を出すことができた」と語っています。
料金収入予測のような業務は他の都政現場にも存在すると予想され、欠損データからでも比較的高い精度の分析・時系列予測ができるAIシミュレーションモデルと、誰でも簡単にモデルを使用できるツールは汎用性が高く、展開が期待されます。さらに、行政としての有効な推計手法の確立に資する可能性も考えられます。